ミニ盆栽をはじめてみる

ミニ盆栽とはなにか?

美しい樹や愛らしい花を見つめていると、ふと緊張が解け、疲れた心が癒やされてきます。こうした自然の樹を自分の手で作り上げ、自分のまわりに樹のある風景をとり込み、小さな鉢の中の雄大な自然を楽しむのが盆栽です。

鉢植えは、植物の持つ自然の美しさを楽しむものですが、盆栽は鉢の中で表現される植物の造形美を楽しむものです。樹形(樹の姿・形)のすばらしさはもちろん、木の高さや大きさ、鉢の色みや形、樹と鉢のバランスなど、トータル的な美しさを鑑賞するのです。したがって、盆栽とは、鉢と植物の調和を味わうものといえます。

そんな盆栽の中でも、さらに手軽に、そして気軽に楽しめるものが、小品盆栽、ミニ盆栽などとも呼ばれ、手のひらに乗ってしまうほどこぶりな盆栽です。

ミニ盆栽

一般の盆栽の、長い時間をかけて作り上げてきた気品のある姿には、どっしりとした重量感があり、大きさも50cm以上のものもあります。中には何万円、何十万円という高価なものを見かけます。

ところが、ミニ盆栽はそうではありません。コスト面もさることながら、大きさはおよそ20cm以下のもので、10cmに満たない樹もあり、その姿は凛として非常に愛らしいものです。鉢が小さいため、水切れが早く、美しい花や実をつけるには技術が必要ですが、自然を愛する心をもっている人であれば、誰でも気軽に始めることができます。これが、ミニ盆栽が人気となった理由でしょう。もちろん、樹の種類も豊富にありますし、四季の移ろいとともに風情を十分に感じることができます。

現代の住宅環境にもピッタリ!

一般的に盆栽作りには、作業スペースや盆栽の置き場所のために、広いベランダや大きな庭などが必要です。しかし、狭いベランダや小さな庭といった最近の住宅環境では、のびのびと盆栽を育てることができません。ところが、ミニ盆栽は樹自体が小さくて軽いため、テーブルの上での作業も可能ですし、樹を運ぶときも苦になりません。また小ぶりのため、さほど時間をかけずに作業ができます。しかも、大きさや運ぶ手間などを考えずにどこにでも飾ることができます。

植木に必要な土も、最近では養分を含んだ、飛び散らない粒状のものやカラフルなものも出まわっていますので、好みや用途に応じて使うことができます。また、鉢も小さな樹に合わせた形状や素材のものを自由自在に組み合わせて使えます。

このようにミニ盆栽なら、作る楽しみと個性を飾る楽しみが、同時に実現できるのです。

どんな樹種があるのか

盆栽の種類は、松柏(しょうはく)、雑木(ぞうき)、花物(はなもの)、実物(みもの)の4種類に分けられます。

松柏とは、常緑針葉樹の盆栽のことで、黒松や五葉松などがあります。時間をかけて気品のある樹に作られ、一般的にほかの樹種にくらべて、力強い印象のある盆栽になります。葉の若々しさを印象づけるために、年月を感じさせる幹肌に仕上げます。難しそうに見えますが、いろいろな形に作ることができるため、意外と扱いやすい面をもっています。

雑木とは、ケヤキやモミジなどの盆栽のことで「葉物」ということもあります。四季の変化に富んでいるため、春の芽出し、夏の緑葉、秋の紅葉や黄葉、冬の裸木と、一年を通して観賞できます。株立や寄せ植えなど樹形も多彩で、繊細に作りたい盆栽です。そのためにも、作業には細やかさが要求されますが、そのぶん、樹の変化を楽しむことができます。

花物とは、花の美しさを楽しむ盆栽です。いかに花を美しく見せるかを考えながら育てるため、初心者でも育てやすいといえます。早春のレンギョウやオウバイ、春のウメやサクラ、夏のサツキやサルスベリ、秋のハギなど、樹種もたくさんありますし、実をつけるものもあります。季節ごとの楽しさを存分に楽しめる盆栽の1つです。

実物とは、実のついた盆栽のことです。ウメモドキやコショウバイなどのように、実を楽しむ樹種や、ヒメリンゴやミカイドウなどのように花と実を楽しむ樹種など、多様にあります。花が終わったあとになる実は、庭やベランダを明るくしてくれます。実物の中にはブナ科のコナラのように雌雄異花(しゆういか)で実がつかない雄木がありますので、入手するときには気を付けなければなりません。

以上のように盆栽にはさまざまな種類があります。どのような樹種を楽しみたいのかを考えてから入手する樹を選ぶようにしましょう。