メダカを繁殖させる

メダカ飼育の醍醐味

メダカ

ニホンメダカ飼育の醍醐味のひとつは、やはり繁殖だろう。採集した野生メダカを産地別に保存する、改良メダカのより美しい個体を生み出す、異なる品種を掛け合わせて好みの形質を持ったメダカにしていくなど、飼育者がさまざまに楽しめる大きな魅力がある。

メダカは寿命が1年半〜3年と短いため、生後50〜60日、普通体型のメダカなら約2cm強のサイズで産卵を開始する。つまり、春先に産まれたメダカは、夏にはもう親魚になることが出来るということ。

産卵、繁殖は決して難しいことではない。親魚となるメダカをペアで状態良く飼育することができれば、一定の条件下で毎日20〜40個産卵し、多くの稚魚の姿を見ることができるだろう。親魚には、骨曲がりなどの奇形や成長不良の個体を避け、できる限り元気なメダカを選ぶとよい。

雌雄判別方法で1番見分けやすいポイントはヒレの形である。オスの背ビレと尻ビレには切れ込みが入り、また尻ビレは平行四辺形に近い形をしている。一方、メスは幅の狭い三角形の尻ビレをもち、背ビレに切れ込みは入らない。

 

繁殖必須条件

メダカの繁殖

繁殖に必要な条件とは、水温15〜20℃以上、日照時間は12〜13時間以上であることと、適切な水質管理と十分な餌の量である。そのため、屋外で水温コントロールなどをせず飼育している場合の産卵期は、春(4月頃)〜秋(9月頃)となる。

繁殖は水槽が適しているということはない。むしろ屋外飼育のほうが水温が自然にコントロールされるため、よいかもしれない。屋外では多くの方がスイレン鉢や発泡スチロールで育成することになると思うが、ここでは便宜上、容器を水槽と表現して解説しよう。

繁殖行動は早朝で、卵の大きさは約1mm。明け方であれば、産卵後に受精した透明な卵がメスの腹部に付着糸で付いている様子を、肉眼でもしっかりと確認できるだろう。

その後、メスは水草や産卵床(シュロや化学繊維の毛糸、モップの穂先など飼育者が使いやすいもの)に卵を産み付ける。

メダカは繁殖力が非常に強く、水草などでレイアウトした環境で飼育すれば、特別なことをしなくても自然と産卵する。だが、産卵後は卵や孵化した稚魚が親魚に食べられてしまう「食卵」を防ぐため、卵を親魚とは別水槽に移動させたほうが得られる稚魚の数は増える。

産卵床に卵を産み付ける前に、メスの腹部から爪楊枝などで卵を絡め取り、孵化用水槽に移してもよい。あるいはまた、卵が産み付けられた産卵床や水草ごと取り出し、水槽を移すという方法がある。

レイアウトした水草に卵を産み付けられると集めにくくなってしまうので、繁殖を目的に育成する場合は、産卵床となるものだけを入れたベアタンクがよいだろう。

 

卵の管理

メダカの卵

卵の管理方法は飼育者の好みでよいが、その際、カビの原因ともなるので無精卵は極力取り除いておこう。有精卵と無精卵の違いは、卵に軽く触れただけで簡単に潰れてしまうものが無精卵、潰れないものが有精卵である。

カビ防止に、メチレンブルーなどの色素材を用いて卵を薬浴してもよい。いずれにしろ、無精卵やカビが生えた卵を見つけたらその都度取り除くことが大切である。

親魚の育成水槽と孵化水槽の水温を変える必要はないが、一般的に水温が高ければ高いほど孵化は早まる。水温が25℃の時、孵化までかかる時間は受精後10日前後。孵化直前の卵を観察すれば、卵の中で稚魚がクルクルと回転する様子を確認できるだろう。

 

稚魚の育成

孵化直後の仔魚は約3〜4mm。稚仔魚育成の容器はなるべく水面がひろいもの、例えばプラ舟やバットのようなもの、スイレン鉢やメダカ鉢などが適している。

逆に、水深はあっても水面が狭い金魚鉢などは適していない。なぜならメダカは上層を泳ぐ性質なのだが、金魚鉢は上層の面積が少なく、さらに上部が絞られているので酸素が取り込みにくいためである。

プラ舟

また、水流があるということは泳いでいることと同じである。水流が強すぎると泳ぎ疲れて弱ってしまうので、止水にして育成するか、エアレーションをかけるにしても、ごく弱めにするのがよいだろう。

飼育水に青水を加えると、親魚の飼育と同じで水質浄化にも役立ち、稚魚の餌にもなるのでおすすめである。

稚魚は、産まれた当日から餌を食べることができる。そこで、稚魚用の人工飼料や、乳鉢で細かくすりつぶしたフレークフード、あるいは熱帯魚用のすくい網で揉み潰したフレークフードを、すべての稚魚に餌が行き渡るように水面にぱっと広がるように与えよう。

メダカの稚魚

親魚と同じで、稚魚も一度にたくさんの量を食べることはできない。一度に食べることができた餌は、数時間で消化してしまうので、なるべくこまめに少量を与えたいところである。

十分な管理下で育成された稚魚は、孵化後2ヶ月で体長2cm前後に成長する。その成長した個体も、同じ年に産卵繁殖できるというサイクルになっている。

メダカの稚魚